ちょうどいいタイミングで現れる神様
雨天の今日、母に言われてコインランドリーに行った。
ベランダに干してもこの天気では乾かないであろう洗濯物を、コインランドリーの乾燥機で乾かしてこい、というお達しである。
そのお店専用のICカードの使い方がイマイチ分からず、試しにあちこち触っていると、乾燥機がスタートしてしまった。まだ洗濯物を入れてないのに。
焦って、乾燥機のドアを開けようとするが、開かない。停止ボタンもない。
中身が空っぽのまま回り出した乾燥機を見つめながら、10分100円の100円を無駄にしてしまったこと、とりあえず10分間このまま待つしかないことを、洗濯物が入ったカゴを抱えながら思っていた。
と、その時、背も高くて横幅もある大柄な男性が入ってきて、店内にある椅子に座った。足が悪いのか、変わった形の杖を持っている。
座ってから1分も経たないうちにその男性は立ち上がり、コインランドリーに併設しているクリーニング店の店員さんに声を掛けに行った。
どうやらその男性は、私が操作をミスってスタートさせてしまった乾燥機の上にある乾燥機で、洗濯物を乾かしている人で、空っぽのまま動いている下の乾燥機に気付いて、自分が上と下を間違えて、入金してしまったと思ったようだった。
「代金の返金はできないんです」と、クリーニング店の店員さんは言いながら、彼と一緒にこちらへ来て、乾燥機の前に立った。
明らかに私が動かした乾燥機のことを言っていると分かったので、やっと私は、自分が操作を間違ってスタートさせてしまったのだと申し出た。
焦っていた私が本当なら簡単に開くドアを開けられず、スタートしたらロックがかかるんだな、と瞬時に思い込んでしまった乾燥機のドアを、店員さんは普通に開けてくれた。
私はその中に洗濯物を放り込み、数分は無駄になったが10分丸々を無駄にせずに済んだ。
その男性にお礼を言うと、「いや、自分が勘違いしていただけなんで」と少し恥ずかしそうに、でも腹から出されているハキハキとした太い声が心地よかった。
彼がいなければ、私は10分間、空っぽのまま回り続ける乾燥機の前で待つしかなかったのだ。
「たまたまでしょ」
そう片付けることもできるけど。